伊吹せんろみちと廃線跡(近江長岡駅から徒歩で行く伊吹山登山口・滋賀県米原市)

伊吹せんろみち終点と廃線跡と伊吹山

少し前に「伊吹せんろみち」を歩いたと書いたら、検索で調べていた方がおられたのですが、詳しい情報が出ていないようなので、私が歩いた当時の詳細を覚えているうちに載せておきます。

伊吹せんろみちは、大阪窯業セメント(当時)専用鉄道の廃線跡の一部です。

大阪窯業セメント専用鉄道は総延長3.7kmで、伊吹鉱山の石灰石を運ぶ機関車専用路線でした。伊吹山でセメントの採掘が行われていた昭和27年から平成11年まで、麓を機関車が走っていた時代があったんですね。当初はSLで、ディーゼルを経て、最後は電気機関車「いぶき号」になったそうです。

平成19年10月に、廃線跡の一部(約2.4km)が遊歩道になりました。それが伊吹せんろみちです。1枚目の写真は、伊吹せんろみち終点と廃線跡と伊吹山です。せんろみち終点は伊吹薬草の里文化センターの裏手にあり、廃線跡はここだけに残されています。

伊吹せんろみちから見た伊吹山

2枚目の写真は、伊吹せんろみちから見た伊吹山です。

近江長岡駅からは、伊吹せんろみち入り口まで約1km。伊吹せんろみちは弥高川の扇状地を約2.4kmほど続きます。途中弥高川の下をくぐるのですが、その手前の道を左に入るとビオトープと森林公園(春照小学校管理・散策自由)があり、とても美しいところです。

弥高川下トンネルから伊吹薬草の里文化センターまでの道は果樹園の中を抜け、往時の雰囲気が偲ばれます。伊吹せんろみち終点(伊吹薬草の里文化センター)から上野まで1.7kmほど歩けば、伊吹山上野登山口(三之宮神社)です。

近江長岡駅、春照の伊吹庁舎前、伊吹薬草の里文化センター、上野口と三之宮神社前にバス停があるので、徒歩と合わせて利用しても面白いかもしれません。

伊吹薬草の里文化センターでは、薬草風呂入浴と食事ができます。売店にミルクファーム伊吹のアイスクリームがありますよ!(歩いた後のアイスはご馳走です^^)

円空作の十一面観音

ちなみに春照北国脇往還の宿場だった町で、先日ご紹介した円空仏があります(拝観要予約)。

近江長岡駅にはタクシーが最高3台常駐しています(運転手さん談・2016年4月当時)。駅から上野登山口まではタクシーで1890円でした。バスだと360円です(2016年4月当時)。

この日は列車事故があった関係で予定のバスに乗れなくて、3人で近江長岡駅からタクシーに乗ったら一人当たり600円強でした。というわけで、場合によってはタクシーをおすすめします。バス・タクシーとも所要時間15分。歩くと約1時間です。

◆距離・時間→近江長岡駅から伊吹山上野登山口まで:約5km・徒歩約1時間
(駅から伊吹せんろみち起点まで1km・15分、伊吹せんろみち2.4km・31分、伊吹せんろみち終点から伊吹山上野登山口まで1.7km・17分)

◆参考資料:伊吹せんろみち(米原市地域振興部地域振興課発行のパンフレット)

伊吹の荒ぶる神14(円空の仏像彫刻・大平観音堂の十一面観音)~近江山河抄の舞台を歩く(79)

伊吹の荒ぶる神14(円空の仏像彫刻・大平観音堂の十一面観音)~近江山河抄の舞台を歩く(79)

春照の町並み

藤川から伊吹の山麓を通って、木之本へぬける裏道があり、北国街道の「脇往還」と呼ばれる。田圃の中に稲架(はさ)がつづくひなびた風景は、近江の懐深く入りこんだという感じがする。その途中、伊吹の村で、円空作の十一面観音を見た。-白洲正子『近江山河抄』「伊吹の荒ぶる神」

2014年9月、岐阜県の関ケ原から滋賀県米原市・長浜市をつなぐ「北国脇往還」を3回に分けて歩き、撮影したことがある。
1回目は関ケ原から米原市春照(すいじょう)まで12kmほど歩いた。山中の峠を越え、美しい春照の町(写真)に出てきたときは心からほっとした。

伊吹の荒ぶる神8(北国脇往還1:関ケ原から藤川の里を訪ねる、上平寺に寄り道して春照へ)~近江山河抄の舞台を歩く(72)

このとき立ち寄れなくて心残りだったのが、白洲正子さんが「その途中、伊吹の村で、円空作の十一面観音を見た。」と記した春照の大平観音堂(※要予約)である。

大平観音堂

写真は、同じ日に見学した皆さんの後姿と大平観音堂。
江戸時代に円空が修行したのは、「伊吹山四ヶ寺」の一つである「太平寺」だったといわれている。

太平寺集落(滋賀県坂田郡伊吹村大字太平寺)はもともと伊吹山中腹にある集落だった。天空の城のような集落で、夏は涼しくソバの畑が広がり、と書くと牧歌的だが、冬場の積雪とそれに伴う集落の孤立は人々を苦しめた(このあたりのことは「地域包括ケアセンターいぶき」の医師の方による解説ページ「太平寺」に詳しい)。

太平寺集落は住民の総意で移転を決め、昭和38年(1963年)にセメント工場の開設に伴って伊吹村の春照に移転(現・滋賀県米原市春照)。十一面観音も一緒に移った。現在は地元の方が観音堂の管理をされている。

円空作の十一面観音

自分の撮影した中では、この写真が一番雰囲気が出ていると思う。円空さんらしいふくよかさ、ほほえみ、そしてノミ使いの跡が見て取れる。

銘文には、伊吹山の桜の木で、一日で彫り上げたと記してあり、高さ二メートルばかりの細長い木像である。何か霊感のようなものを得て、一気呵成に彫ったのであろう。荒っぽい鉈(なた)の跡に、烈しい気魄が現われている。窮屈な格好で、水瓶(すいびょう)を握りしめ、一心に何事かを念じている姿は、仏像というより神像に近く、「立木観音」というものの原型を見る思いがする。・・・十一面観音としては異質のもので、円空の創意と工夫がうかがわれる。-白洲正子『近江山河抄』「伊吹の荒ぶる神」

円空作の十一面観音・横顔

こちらは横顔。「像高180.5cmの桜の一本造り。元禄2年円空58才という晩年の作」である(資料提供:円空仏保存会)。この角度から見ると、すべてをくぐり抜けて悟りに達したような心境や、何かを許しているような表情にも見えてくる。

かつて伊吹村で、円空作の十一面観音に出会ったときの感動が私には忘れられない。それまで私は、円空には人がいう程興味を覚えないが、この像だけは印象に残っている。
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この観音様は違っていた。おそらく素材に制約されたのであろう。窮屈そうに肩をすぼめて、宝瓶ををにぎりしめ、鱗形の天衣をまとった長身からは、鬱勃とした精気がほとばしるようであった。悲しいような、寂しいような微笑を浮かべた表情にも、孤独な人の魂が感じられる。-白洲正子『十一面観音巡礼』

▼大平観音堂(※2016年5月現在の情報)
予約制 毎月第1・第3日曜日 午後1時~4時
拝観料:300円
申し込み:米原市伊吹山文化資料館(0749-58-0252)


泉神社鳥居

この日はJR近江長岡駅から泉神社、伊吹薬草の里文化センター(昼食)と歩き、大平観音堂を見学して「伊吹せんろみち」を経てJR近江長岡駅まで帰った。

泉神社神泉

泉神社の湧水は名水百選に選ばれていて、地元の方のご好意で自由に持ち帰ることができるようになっている(※下の写真が泉神社の取水場)。

伊吹の荒ぶる神に敗れたヤマトタケルが口にして息を吹き返したとされる水は、この泉神社の湧水とも、近くの醒井の水とも言われている。

イブキ、イブクという言葉は、息を吹くことを意味するから、霧の多い伊吹山に、古代の人々は、神のいぶきを想ったに違いない。そのいぶきに当って、日本武尊は命を落した。
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『古事記』では、「居寝(ゐさめ)の清水」と呼び、大蛇も白猪になっているが、ともに伊吹山に住む原住民族を象徴したものに違いない。山頂からは、石器が多く出土しており、毒草をぬった石矢が、氷雨となって降りかかったのであろう。
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このあたりを領した息長(おきなが)氏の祖先には、水依媛という人物がおり、水が豊富な伊吹山の周辺に、多くの水神が祀られたのも不思議ではない。・・・もしかすると、息長氏に助けられたのが、そのような伝説となって残ったのではあるまいか。尊の妃の一人は息長氏で、その一族が祀った水神と結びついたとも考えられる。 -白洲正子『近江山河抄』「伊吹の荒ぶる神」

泉神社の取水場

醒井の「居醒の清水」については、以前にこちらでご紹介している。

伊吹の荒ぶる神2(中山道・柏原宿から醒井宿を歩く~後編:柏原一里塚から醒井「居醒の清水」とバイカモの花)~白洲正子「近江山河抄」の舞台を歩く(34)


大清水のお地蔵さん

泉神社の地元・大清水(滋賀県米原市大清水)にて。きれいな水が流れる集落の一角で、絵になるお地蔵さんに出合った。

『近江山河抄の舞台を歩く』の撮影で私が一番通ったのは、間違いなく米原(滋賀県米原市)である。2016年は毎月のように伊吹山麓に通い、大久保のセツブンソウ小泉の棚田大久保の長尾寺ときて、大平観音堂の円空仏(今回)、そして観音寺(米原市朝日)と続いている。

地元滋賀のありのままの美しさをお届けしたいと続けてきたブログなので、悪質な無断転載(詳細は前回記事)などにめげず、少しずつでも掲載を続けていきたい。

田植え前の風景

田植え前の風景(滋賀県米原市大清水)。


オドリコソウ

オドリコソウが咲いていた。


田植えの風景と伊吹山

伊吹山(右奥)と田植え中の田んぼ(滋賀県米原市長岡)。
米原はいつどこへ行っても美しいと実感する、今日この頃です。

撮影日:2016年5月18日
Copyright(c) Jun Kanematsu/junphotoworks.com(兼松純写真事務所)

『近江山河抄の舞台を歩く』は、『かくれ里』で知られる随筆家・白洲正子さんの紀行文『近江山河抄』に登場する場所を、写真と現在の情報を交えてご紹介する個人プロジェクトです。

近江生まれの筆者(兼松)が各地をなるべく公共交通機関と徒歩で訪ねて、時には現地のボランティアガイドの皆さんにご協力いただきながら、2013年3月より掲載してきました。

撮影許可が必要な場所や同伴者が必要な山の中以外は、現在ほとんどご紹介済みとなりました。その後2015年に滋賀で日本遺産に選ばれた場所があることから、そちらを追加してみようと現在各地を撮影中です。

 

▼こちらの本でも、大平観音堂の十一面観音(円空仏)が登場します。

伊吹の荒ぶる神11(北国脇往還4:小谷郡上から雨森を経て北国街道木之本へ)~近江山河抄の舞台を歩く(75)

ソバ畑
朝の光の中、ソバ畑の向こうに、街道沿いの集落(小谷美濃山)が見えていた。

北国脇往還を3回に分けて歩く最終日は、長浜市の小谷郡上から木之本までの約11km。河毛駅から小谷郡上に出て、道なりに進み、小谷美濃山から小谷丁野(おだにようの)へ入る。

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伊吹の荒ぶる神10(北国脇往還3:長浜市八島から、伊部宿を経て、小谷郡上まで)~近江山河抄の舞台を歩く(74)

秋葉神社の参道と北国脇往還
北国脇往還は、岐阜の関ケ原から滋賀の木之本へ抜ける脇街道で、伊吹山南麓を通る。中山道・北国街道間の近道で、秀吉の大返しや江戸時代の参勤交代に使われた歴史ある道だ。

この北国脇往還を3回に分けて歩いたのは、今年9月のことだった。
9月も中旬を過ぎると気温30度を切るが、この日は風の強い日だった事を覚えている。

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伊吹の荒ぶる神9(北国脇往還2:米原市春照から小田分水、姉川越え、峠を歩いて長浜市野村町まで)~近江山河抄の舞台を歩く(73)

春照の町並み
滋賀県米原市春照(すいじょう)は、伊吹山麓、北国脇往還と長浜道の分岐点に位置する。

脇往還の近くには伊吹の薬草風呂に入れる施設があり、街道沿いの町並みも美しい。今回は近江長岡駅から伊吹山登山口行きバスに乗り、伊吹庁舎前で下りて歩くことにした。

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伊吹の荒ぶる神8(北国脇往還1:関ケ原から藤川の里を訪ねる、上平寺に寄り道して春照へ)~近江山河抄の舞台を歩く(72)

蔵のある風景

ある時私は、関ケ原から遡って、藤川の集落を訪ねたことがある。一条兼良はしばらくこの辺に滞在し、『藤川記』という書を残したが、定家も若い頃いたと伝えられ、彼が住んだという旧家も残っている。
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藤川から伊吹の山麓を通って、木之本へぬける裏道があり、北国街道の「脇往還」と呼ばれる。田圃の中に稲架(はさ)がつづくひなびた風景は、近江の懐深く入りこんだという感じがする。その途中、伊吹の村で、円空作の十一面観音を見た。-白洲正子『近江山河抄』「伊吹の荒ぶる神」

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伊吹山麓の道、北国脇往還を歩く~花と水辺の風景4(長浜市/高月町馬上の水辺⇒雨森のイチョウ⇒木之本)&官兵衛周遊券の情報を掲載しています

伊吹山とソバ畑、郡上の集落
河毛駅から小谷郡上町へ向う途中、朝の光の中に姿を現したのは伊吹山。
手前は一面のソバ畑で、奥に見えているのが郡上の集落です。

(1人で)北国脇往還3分割ウォーク最終日は、小谷郡上町から木之本まで、約12kmを歩くことになりました。

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伊吹山麓の道、北国脇往還を歩く~花と水辺の風景3(長浜市/野村の水路と八島の水車⇒伊部宿⇒小谷郡上のお地蔵さん)

水路と地蔵堂、ヒガンバナ
北国脇往還は、関ケ原から伊吹山麓を通り、木之本で北国街道と合流する脇街道。

行程の半分以上を占めるのが、集落と田圃の中を行く、平坦でのどかな道です。滋賀県長浜市野村町に入ると、水路そばの地蔵堂で、沢山のヒガンバナが咲いていました。

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伊吹山麓の道、北国脇往還を歩く~花と水辺の風景1(関ケ原の栗の木⇒米原市春照のヒガンバナ)

ヒガンバナ
滋賀から岐阜にかけて、北国脇往還と呼ばれる脇街道があります。
北国街道から中山道への近道で、木之本(滋賀)から関ケ原(岐阜)までの30数キロの道です。

近江(滋賀県)から関ケ原へ抜ける近道として、江戸時代に参勤交代に利用されて栄えました。この街道沿いには、歴史あふれる美しい集落が残っています。

その宿場のひとつ、藤川(滋賀県米原市藤川)を訪ねるのが当初の予定でした。
藤川へは路線バスが通っておらず、関ケ原から歩いていくことを考えていたからです。
せっかくの機会なので、関ケ原から木之本までを3回に分けて歩いてみることにしました。(『近江山河抄の舞台を歩く』「伊吹の荒ぶる神」の続編としても今後掲載予定です。)

歴史の話を書くと、どうしても花や風景の写真を載せる機会が少なくなってしまうので、それとは別に、北国脇往還のまちの花や水路の風景を中心に載せてみようと思います。

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