司馬遼太郎さん紀行文『街道をゆく』に登場する滋賀(近江)と堅田の町、そして比叡山

にない堂

今は亡き司馬遼太郎さんの紀行文『街道をゆく』。全43冊に上る膨大な著作です。

その第一巻(単行本・文庫版)は、滋賀県大津市~高島市をゆく「湖西のみち」から始まります。大津市北小松の箇所で堅田が登場することは、街道をゆく「湖西のみち」北小松と堅田の話(滋賀県大津市)で、先日ご紹介しました。

▼街道をゆく1「湖西のみち」より

近江」というこのあわあわとした国名を口ずさむだけでもう、私には詩がはじまっているほど、この国が好きである。(中略)近江の国はなお、雨の日は雨のふるさとであり、粉雪の降る日は川や湖までが粉雪のふるさとであるよう、においをのこしている。

右手に湖水をみながら堅田をすぎ、真野をすぎ、さらに北へ駆ると左手ににわかに比良山系がおしかぶさってきて、(中略)山がいよいよのしかかるあたりに「小松(北小松)」という古い漁港がある。

▼街道をゆくについて

1971年(昭和46年)、作者47歳の時に「週刊朝日」にて読み切りによる連載を開始。1996年(平成8年)2月の作者逝去により、43冊目の「濃尾参州記」を最後に中絶(未完)した。 wikipedia(街道をゆく)

滋賀県の登場する部分だけでも読んでみようと、先日、文庫版で数冊購入しました。
今度は比叡山の巻(16 叡山の諸道)で、堅田が登場していました!

常行堂
常行堂(比叡山延暦寺・西塔エリア、滋賀県大津市坂本本町)/Hieizan enryaku-ji temple(Otsu city,Shiga prefecture,Japan)

堅田と比叡山

当ブログで以前からご紹介してきたのは、室町時代に蓮如を匿ったことで比叡山延暦寺と対立し、延暦寺の僧兵に町を焼き討ちされた堅田の話でした。

蓮如を匿ったことで焼き討ちに遭った堅田の町 (滋賀県大津市) 【後編】 ~Honkatata/本堅田 358

司馬さんの『街道をゆく』で出てくる話は、戦国時代に今度は比叡山が焼き討ちされた時の話です。(有名な織田信長による焼き討ちです。)

時を遡る事平安時代、比叡山の中興の祖として名高い良源という僧侶がおられました。おみくじの考案者、通称・元三大師(がんざんだいし)として知られる方です。

この方は比叡山の一番北側にある横川(よかわ)にお住まいで、その跡には四季講堂(元三大師堂)が建っています。

昨年のブラタモリで比叡山が取り上げられた時、林田アナが「もっと積極的に番組の進行に関わったほうがいいのでしょうか」と僧侶に尋ね、おみくじでお告げを聞いていたのは、この四季講堂(元三大師堂)です。

 

元三大師(良源)はエピソードの多い人物で、元三大師が座禅していたところ、「立ち去っても壁に良源の影がのこっている。弟子たちが騒ぎ、やがて尋禅阿闍梨という絵の達者壁の影を丁寧に写しとったところ、写しおえるころに壁から影が消えた」(街道をゆく16叡山の諸道)といいます。

この不思議な絵は「良源の死後、四季講堂の本尊に」なりました。

 

比叡山に伝わる伝承によれば、信長の焼き討ちの際、この絵を背負って逃げた比叡山の関係者を見逃し、護衛兵までつけて「堅田のほうに落としてやった」のが秀吉だったというのが、司馬さんが紹介している逸話です。

元三大師という方は出身が浅井郡虎姫(現在の滋賀県長浜市)と言われており、秀吉さんは当時長浜の城主でした。元三大師に対して親近感や敬意を抱いていたことは十分に想像できますね。

それにしても、横川から堅田の方に逃がしてやったというのは、坂本の西教寺の方に下りたのか、それとも仰木峠を越えて雄琴方面に下りたのか???仰木峠へは行ったことがないので、機会があれば行ってみたいです。

元三大師堂
四季講堂(元三大師堂、比叡山延暦寺・横川エリア、滋賀県大津市坂本本町)/Hieizan enryaku-ji temple(Otsu city,Shiga prefecture,Japan)

横川の元三大師道から、飯室谷を経て坂本の西教寺まで下りたときの写真です。

横川から飯室谷までの山道-9

日枝の山道5(比叡山横川から飯室谷まで、千日回峰行の道を駆け下りる。そして安楽律院へ)~近江山河抄の舞台を歩く(56)

雪の比叡山(当記事掲載写真)

雪の比叡山延暦寺・根本中堂から西塔まで歩く(2016年1月20日撮影)

 

『街道をゆく』滋賀県が登場する巻

街道をゆく 1 湖西のみち、甲州街道、長州路ほか (朝日文庫)
司馬 遼太郎・朝日新聞出版
※「湖西のみち」渡来人に思いをはせて大津市~高島市を移動。北小松の箇所で堅田登場!
街道をゆく 2 韓のくに紀行 (朝日文庫)
司馬 遼太郎・朝日新聞出版
※百済の旅の最後に滋賀県日野町の鬼室神社(渡来人の鬼室集斯が祭神と伝わる神社)が登場
街道をゆく 4 郡上・白川街道、堺・紀州街道ほか (朝日文庫)
司馬 遼太郎 ・朝日新聞出版
※「北国街道とその脇街道」長浜市栃ノ木峠から柳ヶ瀬、余呉から木ノ本へ(いわゆる湖北)
街道をゆく 7 甲賀と伊賀のみち、砂鉄のみちほか (朝日文庫)
司馬 遼太郎・朝日新聞出版
※「甲賀と伊賀のみち」甲賀市信楽町の紫香楽宮跡や多羅尾などを訪問
街道をゆく 16 叡山の諸道 (朝日文庫)
司馬 遼太郎・朝日新聞出版
※比叡山延暦寺(滋賀県大津市)が舞台。浅井郡(現在の長浜市)出身の元三大師をめぐる秀吉の逸話の中で堅田登場!
街道をゆく 24 近江散歩、奈良散歩 (朝日文庫)
司馬 遼太郎・朝日新聞出版
※「近江散歩」米原市柏原の寝物語の里から、彦根市、近江八幡市まで(いわゆる湖東)

 

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