自然風景のナチュラルな現像方法について(2)前提編:デジタルの色と各種設定

colornavigator

 

写真を始めてしばらくすると、モニターで見た色がプリントした色と一致しなくてがっかりしたり、RAW現像の方法で悩んだり、色の範囲にはAdobeRGBとsRGBがあると聞いたがどちらがいいのかなど、モヤモヤしてくることがあると思います。

方法論は探せば色々書かれていると思うので、この連載ではなぜその話になるのかという前提知識を書いたうえで、各種設定について触れてみました。今回は自然風景写真に限らず、一般的な話を書いています。

具体的にどう現像していくかについては、回を改めて更新する予定です。

前回はこちら。
自然風景のナチュラルな現像方法について(1)RAW現像の話をする前に

 

ゴール(仕上がり)を意識すること

これから書くことは、すべて方法論とその理解のための原理です。何のためにそうしたいのかを意識すると、迷ったときにそれほどこだわらなくてもいいことかどうか、ではどうしたらいいのかという方向性が見えてくると思います。

たとえばブログに掲載、SNSに掲載、プリントする、写真展に出すなどゴールは様々です。
WEBで完結するデジタルコンテンツ(ブログ・SNS)か、プリントするのかによっても、考慮する点が変わってきます。

 

1.前提知識:デジタルの色について

モニター・プリンターの選び方や、ソフトの設定に関わってくる話です。

目次

1-1.色空間 sRGBとAdobeRGB ―色の再現範囲― ⇒2-1.設定方法

1-2.色温度 ―光源によって見え方は違う― ⇒2-2.環境光の設定

1-3.デジカメ・ディスプレイの色とプリンターの色は原理が違う⇒2-3.色合わせ=キャリブレーション

 

1.色空間 sRGBとAdobeRGB ―色の再現範囲―

色空間(カラースペース)という概念があります。表現可能な色の範囲を表したもので、AdobeRGBのほうがsRGBよりも広く、青や緑において顕著です。

color-space by  Oscar de Lama [CC BY-NC 2.0], via flickr.com

では、AdobeRGBにすればいいかというと、必ずしもそうではないんですね。

 

初心者の方で色空間に迷ったときは、sRGBをお勧めします。

というのも、sRGBはデジタル機器における色空間の標準です。モニター、プリンター、デジカメ、スマホ、タブレット、パソコンといったほとんどの機器が対応しています。

デジカメで撮影した時(一眼・ミラーレス・コンパクトデジカメのいずれも)、通常はsRGBで撮影されています。AdobeRGBで撮影するには、RAW撮影できるカメラでAdobeRGBを選択しなければなりません。

ところがAdobeRGBで撮影すると、その正確な色を見るために専用のディスプレイ(モニター)が、印刷にはAdobeRGB対応のプリンターが必要になります。

ブログにUPするとき、プリントして人に差し上げるとき、デジタルデータとして販売するとき、どの場合もsRGBに変換しておかないと「あれ、色が変だぞ・・・」ということになりかねません。

sRGB
国際電気標準会議 (IEC) が定めた国際標準規格。一般的なモニタ、プリンタ、デジタルカメラなどではこの規格に準拠しており、互いの機器をsRGBに則った色調整を行なう事で、入力時と出力時の色の差異を少なくする事が可能になる。

Adobe RGB
Adobe RGBはAdobe Systemsによって提唱された色空間の定義で、sRGBよりも広い(特に緑が広い)RGB色再現領域を持ち、印刷や色校正などでの適合性が高く、DTPなどの分野では標準的に使用されている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/色空間

 

慣れてきたら使い分けをお勧めします。

Photoshopのヘルプページに、見事なまとめがありましたので引用します。(クリエイティブ・コモンズCC BY-NC-SA 3.0による)

Web 用の画像を作成するときは sRGB をお勧めします。このプロファイルは Web 上での画像の表示に使用される標準的なモニターのカラースペースを定義しているからです。一般コンシューマー向けデジタルカメラからの画像で作業するときも sRGB をお勧めします。これらのカメラのほとんどが初期設定のカラースペースとして sRGB を使用するからです。

印刷用のドキュメントを作成するときは Adobe RGB をお勧めします。Adobe RGB の色域には、印刷に適しているにもかかわらず sRGB の色域で定義できない一部の色(特にシアンおよび青)が含まれているからです。プロフェッショナル向けのデジタルカメラからの画像で作業するときも Adobe RGB をお勧めします。これらのカメラのほとんどが初期設定のカラースペースとして Adobe RGB を使用するためです。

photoshopのカラー設定(Adobe)

 

私の今までの経験の中で、AdobeRGBで納品したのは一社だけ(ただし長期取引中)です。

色域の広さに惹かれてAdobeRGBを選択する場合は、デジカメ→ディスプレイ→現像ソフト→プリンターをAdobeRGBで統一する必要があります。

ただし、ブログにUPする、お店プリントして人に差し上げる、デジタルデータとして一般的に販売するなどの場合は、現像後にソフトの「プロファイルの変換」機能でsRGBに変換することが必要になります。

 

プロファイルの変換(例:画面はPhotoshop Elements バージョン12) color-space

Lightroom、Photoshop、SILKYPIX Developer Studio Pro、SILKYPIX Developer Studio といったソフトには、「プロファイルの変換」機能が付いています。ソフトを選ぶとき、こういった機能があるかどうかを見るのが一つのポイントです。

 

2.色温度 ―光源によって見え方は違う―

買い物をした後、デパート店内の白い光と自宅の蛍光灯の下では、質感が違って見えた経験はありませんか。

コンサート会場のオレンジ色の光の下では、うす暗く感じます。同じプリントでも、室内と屋外では違って見えます。これを数字で表したのが色温度です。

色温度(いろおんど、しきおんど、英語:color temperature)とは、ある光源が発している光の色を定量的な数値で表現する尺度(単位)である。単位には熱力学的温度の K(ケルビン) を用いる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/色温度

color-wheel

by Hołek [CC BY-SA 2.5 pl], via Wikimedia Commons

 

写真に関係してくるのは以下の色温度です。

・6500K(Web向けコンテンツ)=RAW撮影したデータを見るときの基準の色
・5000K(印刷用)=プリントを見るときの基準の色

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業務用のモニターでは、色温度の調整を行うことで色の再現性を高めています。

 

3.デジカメ・ディスプレイの色とプリンターの色は原理が違う

モニターで見た色とプリントした色が一致しないのは、そもそも色を生み出す原理が違うからです。だからこそ色合わせの必要が生じてきます。ざっと見てみましょう。

光の三原色 [RGB](赤 緑 青)=デジカメやディスプレイの色

color-rgb by  Quark67(Modified color by Monami) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

光の三原色 [RGB]では、光を当てて三色を重ねることで「白」が生まれます。「黒」は光を当てない事で表現します。

 

色の三原色[CMY] (シアン(水色に近い) マゼンダ(赤紫) 黄色)+ 黒[K] =プリンターの色

color-cmykby Quark67 [CC BY-SA 2.5], via Wikimedia Commons

 

色の三原色[CMY]では、色素(インク)による吸収により「黒」が生まれます。

実際はCMYだけでは鈍い暗色になるので、キー・プレート/Key plateと呼ばれる「他の印刷の合わせになる版のことで、通常、文字や図の輪郭を表す黒」を混ぜて黒を発色させます。(wikipedia(CMYK)より)

このようにモニターで見た色とプリントでは原理が違うので、プリンターなど印刷機の側で色再現のための工夫がされています(カラーマネージメントシステム)。

 

RGBとCMYは補色関係にある(赤⇔シアン、緑⇔マゼンタ、青⇔黄色)

補色は互いの色味を打ち消しあう関係にあります。だからPhotoshopなどのソフトを使うとき、赤の色味を弱めたければシアンを強める操作をするわけです。

color-wheel

by Protocactus [CC BY-SA 4.0], via Wikimedia Commons

 

2.前提となる各種設定

1.色空間(カラースペース。sRGBまたはAdobeRGBで統一)

(1)デジカメの設定

(2)ディスプレイ(色域が対応しているものを選ぶ)

(3)RAW現像する場合:現像ソフトの設定

(4)プリンターの設定

sRGBの場合は特に気にしなくて構いません(標準がsRGBで統一されているので)。色空間の統一を意識しておくのは、Adobe RGBの場合です。

 

(1)デジカメの設定

RAW撮影できる機種なら、画素数やJPEG,RAW撮影の設定画面からAdobe RGBを洗濯できます。

説明書を参考に「RAW撮影」(または「RAW+JPEG撮影」)かつ「Adobe RGBで撮影」に設定しておけばOKです。ここで設定したものが、PhotoshopやLightroomの設定の中で出てくる「埋め込まれたプロファイル」になります。

 

(2)ディスプレイ

Adobe RGB対応(Adobe RGBカバー率99%などど表記されているもの)を選ぶ必要があります。設定の詳細はメーカーの説明書を参考にして下さい。

 

(3)RAW現像する場合:ソフトの設定

たとえばPhotoshop CCだと「編集」→「カラー設定」にて設定できます。
・「作業スペース」をAdobeRGBに設定(※普段使うものを選択)。
・「カラーマネジメントポリシー」は「埋め込まれたプロファイルを保持」。
印刷する場合は、プリント設定が必要な場合があります(後述)。

前に書いたとおり、ブログにUPする、お店でプリントする、デジタルデータとして一般的に販売するなどの場合は現像後にソフトの「プロファイルの変換」機能でsRGBに変換することが必要になります。

color-space

 

(4)プリンターの設定

Photoshop側で色合わせする場合:Photoshopの「プリント」設定で、プリンター名の下にある「カラー調節」をオフ(色補正しない)にしておく必要があります。
プリンター側で色合わせする場合:機種によりますが、カラー調整の箇所で、マニュアル補正→AdobeRGBに設定できます。

※もともと(プロファイルが)sRGBの場合:市販の一般的なプリンターではsRGBが標準になっていますので、特に設定する必要はありません。

 

2.色再現性その1:環境光

写真プリントの色合わせをする場合、カーテンを閉めるなど太陽光の影響を受けない部屋で、照明を5000K昼白色にすることが推奨されています。照明で一番簡単な方法は、手元だけ5000kにすることです。

プロ向けに、5000k(プリント観賞用)のLEDスタンドが販売されています。

一般用としても使うなら、お値段的にも↓こちらがお勧めです。

 

環境光について、Photoshopのヘルプページより引用します。(クリエイティブ・コモンズCC BY-NC-SA 3.0による)

カラーマネジメントの表示環境の作成

モニターおよび印刷物上での色の外観は作業環境によって影響されます。最適な結果を得るには、次の操作によって作業環境のカラーと光源を調整します。

  • 一定の光源レベルと一定の色温度を提供する環境で、ドキュメントを表示します。例えば、太陽光線のカラー特性は一日を通して変化します。その結果、色が画面に表示される状態も変化するので、カーテンを閉めるか窓のない部屋で作業します。室内で使用する蛍光灯の青緑がかった光を除去するために、D50(5,000° K)の照明を使用してください。また、D50 のカラービューワを使用して、印刷されたドキュメントを見ることもできます。
  • 壁と天井がニュートラルカラー(グレー系統の色)の部屋で、ドキュメントを表示します。部屋の色によって、モニターの色と印刷物の色が異なって見えることがあります。表示に使用する部屋に最も適しているカラーは、中間色のグレーです。着衣の色も、モニターのガラスに反射して画面上の色の外観に影響を与える場合があります。
  • モニターのデスクトップには、カラフルな背景パターンを使用しないようにします。ドキュメントの周囲に派手なパターンや明るいパターンがあると、色を正しく認識できません。中間色のグレーだけを表示するようにデスクトップを設定します。
  • 完成した作品を実際に消費者が見る場合と同じ条件で、ドキュメントの校正刷りを確認します。例えば、家庭用品のカタログであれば一般家庭で使用される白熱灯の下、オフィス家具のカタログであればオフィスで使用される蛍光灯の下などで確認するのが望ましいと考えられます。ただし、最終的な色の判断は規定の照明条件の下で行ってください。

カラー設定(Adobe Photoshop マニュアル カラーマネジメント)

 

3.色再現性その2:色合わせ=キャリブレーション

キャリブレーションツールを使うAdobe RGBの場合は対応ディスプレイを使うの二点になります。

ツールというのは、モニターにぶらさがっている↓これを使います。

Dell 2209WA - Calibration

by  Ryan Finnie(CC BY-SA 2.0) ,via flickr.com

この記事を書いている2019年6月現在だと、市販されていて入手しやすい正規品は下記の商品です。いずれも複数台に使えますし、ノートパソコン、タブレットの色合わせにも使えます。「ディスプレイに表示される色がどうも違う」と気になる方は、試してみてください。

SpyderX Pro

 

i1Display Pro

 

Adobe RGB対応ディスプレイを使う(Adobe RGBの場合)

私の事務所ではEIZOのColorEdgeを使っています。レンズが一本買えるお値段でしたが、色の再現性と手厚い保障(調子を検査してもらうときに代替機の貸し出しあり)に助けられています。

予算が許すならEIZO をお勧めします。最近はBenQも人気があるようですね。

EIZO ColorEdge

 

BenQ

 

Adobe RGB対応ディスプレイ+内蔵ツールを使う

究極の手がこのタイプです。AdobeRGB対応かつ、キャリブレーションセンサー内蔵!もちろん市販のキャリブレーションツールと併用することもできます。事務所ではこの内蔵型タイプを使っていますが、管理がとても楽です。

↓こちらはお値段張るけど、キャリブレーションセンサー内蔵で4K対応!

 

EIZOでは無料の録画セミナーもあります。参考にして下さい。
https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/videos/colormatchingseminar/index.html

 

私が初めて色の勉強をしたのは20代の頃で、これからは色とコンピューターの知識が必要になると考えて、どちらも独学しました。写真の仕事に役立っています。

当時使ったのが、東商カラーコーディネーター検定(3級・2級)のテキストです。ルネ・ラリック(フランスのガラス工芸家、金細工師、宝飾デザイナー)や、近代デザインの父と呼ばれるウィリアム・モリスのことを知ったのも、2級のテキストでした。

どちらかというと、色彩の基礎や商品デザイン、色の歴史について勉強したい方に向いていますが、読みごたえがあります。

一応リンクを貼っておきますが、お値段が張る本なので参考程度までに。

 

今回書いてきたような写真と色を基本から学ぶなら、お勧めは桐生彩希さんの本です。使用ソフトに関係なく、10年経っても古くならない知識が書かれた本として定評があるのが、こちらの一冊です。

 

桐生さんの本で、私が最初に買ったのがPhotoshop Elementsレタッチ・テクニック (2002/02)というムック本でした。今も手元にありますが、内容が全然古くなっていません。桐生さんはいわば私の師匠のような方です。

Photoshop Elementsレタッチ・テクニック (I/O別冊)

最近だとこちらの本が出ています。Lightroom Classic CC対応版をお探しの方はぜひどうぞ。

 

関連事項:パソコンのスペックと現像ソフトについて

前回記事にまとめています。

パソコンのスペックと現像ソフトについて