松尾芭蕉と堅田2:俳文「堅田十六夜の弁」全文(滋賀県大津市本堅田)

浮御堂の見える公園

近江八景の一つとして知られる堅田の浮御堂の近くに、十六夜公園という名前の公園があります。公園の名前は、松尾芭蕉の俳文「堅田十六夜の弁」にちなみます。

元禄4年(1691)8月16日、芭蕉は堅田の竹内茂兵衛成秀(たけうちもへいなりひで)の家で俳句の席を催しました。この夜の様子を記して成秀に贈ったのが、俳文「堅田十六夜の弁」(かたたいざよいのべん)です。

 

この日の前日(十五夜)、芭蕉は大津市南部の「義仲寺」で月見の会を催していました。(”望月の残興なほやまず”)

十六夜の日、弟子数人と琵琶湖に舟を出し、大津市北部の堅田に来たという訳です。(”二三子いさめて、舟を堅田の浦に馳す。”)

 

義仲寺(ぎちゅうじ)は大津市南部にあるお寺で、粟津(大津市粟津)で戦死した木曽義仲のお墓と並んで、芭蕉のお墓があります。木曽殿の隣で眠りたいというのが芭蕉の遺言でした。

芭蕉は大津を愛し、何度も訪ねては長期滞在しています。芭蕉が大津で読んだ句は、芭蕉の全発句の約一割にあたる89句にのぼるそうです。(数字は大津市観光物産課発行のパンフレットより)


参考:「義仲寺」と堅田の位置関係

□義仲寺:滋賀県大津市馬場1-5-12
□アクセス:JR琵琶湖線「膳所駅」下車 徒歩10分

 

「堅田十六夜の弁」全文

琵琶湖畔・十六夜公園にある堅田十六夜の弁記碑。向こうに浮御堂が見える。

大津市作成の堅田十六夜の弁の解説文

望月の残興なほやまず。二三子いさめて、舟を堅田の浦に馳す。
その日、申の時ばかりに、何某茂兵衛成秀という人の家のうしろに至る。
「酔翁・狂客、月に浮 れて来たれり」と、舟中より声々に呼ばふ。
あるじ思ひがけず、驚き喜びて、簾をまき塵をはらふ。
「園中に芋あり、大角豆(ササゲ)あり。鯉・鮒の切り目たださぬこそいと興なけれ」と、岸上に櫂をならべ筵(むしろ)をのべて宴を催す。
月は待つほどもなくさし出で、湖上はなやかに照らす。
かねて聞く、仲秋の望 (もち)の日、月浮御堂にさし向ふを鏡山といふとかや。
今宵しも、なほそのあたり遠からじと、かの堂上の欄干によって、三上(みかみ)・水茎の岡、南北に分かれ、その間にして峰ひきはへ、小山いただきを交ゆ。
とかく言ふほどに、月三竿(さんかん)にして黒雲のうちに隠る。いづれか鏡山といふことをわかず。
あるじの曰く、「をりをり雲のかかるこそ」と、客をもてなす心いと切なり。
やがて月雲外に離れ出でて、金風・銀波、千体仏の光に映ず。
かの「かたぶく月の 惜しきのみかは」と、京極黄門の嘆息のことばをとり、十六夜の空を世の中にかけて、無常の観のたよりとなすも、この堂に遊びてこそ。
「ふたたび恵心(えしん)の僧都の衣をうるほすなれ」と言へば、あるじまた言ふ、「興に乗じて来たれる客を、など興さめて帰さむや」と、もとの岸上に杯をあげて、月は横川(よかわ)に至らんとす。

鎖(じょう)明けて月さしいれよ浮御堂
やすやすと出でていざよふ月の雲

”千体仏”・・・浮御堂に安置されている一千体の阿弥陀仏のこと。
”恵心の僧都”・・・比叡山横川恵心院の僧・源信のこと。平安時代に浮御堂を開いたお坊様です。

”月は横川(よかわ)に至らんとす”に出てくる横川は、比叡山延暦寺の一番奥にある聖地です。芭蕉さんたち、月が傾くまで一晩中飲んだということですね^^;

浮御堂の夕暮れ(2013年9月20日、本堅田)
十六夜の月と浮御堂
写真(バックナンバー):芭蕉も愛でた【琵琶湖畔、堅田・十六夜の月】と浮御堂(2013年9月20日撮影)より。鎖(じょう)明けて 月さし入れよ 浮御堂(芭蕉)


□十六夜公園:滋賀県大津市本堅田1丁目18-18

□アクセス:京都駅よりJR湖西線で約20分、堅田駅下車。
堅田駅より江若バス堅田町内循環線で約5分、「堅田出町」下車。
湖岸方面(東洋紡・堅田高校の反対方向)へ徒歩約10分。

 

この記事は当ブログのバックナンバーをまとめ直したものです。

・堅田十六夜の弁 句碑写真・・・初出:■JR湖西線・堅田駅⇔浮御堂周辺散歩■58 ~alley/路地 020、Ukimido /浮御堂 024、Honkatata/本堅田 070(2008/6/27掲載)

・十六夜公園 写真・・・初出:堅田で過ごす夏(9) 浮御堂の見える公園 ( 琵琶湖畔・十六夜公園 ) ~Ukimido/浮御堂 057(2010/8/9掲載)

・堅田十六夜の弁 全文書きおこしと注釈・・・初出:琵琶湖の畔の風景写真「Katata/堅田」|【お月見イベント】のお知らせ~近江八景「浮御堂」近く、「十六夜公園」にて。2012/10/1(月)19時開演、生演奏あり(2012/9/14掲載)

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