紫香楽の宮4(聖武天皇と良弁僧正ゆかりの寺、安養寺と西応寺)~白洲正子「近江山河抄」の舞台を歩く(21)

安養寺駐車場と名神高速道路の高架
近江南部は奈良ゆかりの古刹が多い。聖武天皇勅願で良弁によって開かれた寺である。
石山寺、金勝寺に続いて、滋賀県栗東市の安養寺と、湖南市の西応寺を訪ねた。

JR草津駅から帝産バス金勝(こんぜ)線に乗り、約10分。なごやかセンター口で下車。
道を戻り、名神高速道路の高架の手前で左折。高架に沿って10分程歩くと安養寺がある。
地名も栗東市安養寺となっていて、周辺には治田東小学校や栗東自然観察の森がある。
普段参拝する人はあまりいないようで、ほとんど人に出会わなかった。

安養寺参道の新緑(モミジ)
参道のモミジの緑が目にまぶしい。傍らでフジの花がひっそりと咲いていた。

安養寺の表山門
安養寺は天平12年(740)、聖武天皇の勅願により金勝寺別院の一つとして良弁が開基。

承和元年(834)、弘法大師(空海)が中興。現在は真言宗の寺となっている。
金勝の里(金勝寺周辺)から少し離れたところにあるが、訪ねたい場所の一つだった。

安養寺・十三重の賽塔
十三重の賽塔(重要文化財)。弘長年間よりやや遅れる鎌倉時代後期の作とされる。

案内板によれば、高さは約4mで、現在は第九・十・十一層を欠く十重になっている。
塔身には四仏が刻まれ、基礎の三面に格狭間(こうざま)と呼ばれる装飾がある。
正面は二区に分けて二体の比丘形(僧侶の姿)を掘り出す、珍しい形式の層塔だという。

安養寺庭園
安養寺庭園。客殿の北庭、庫裏書院の東庭をなし、東側の山裾に展開する池庭である。

ゆるい傾斜の山裾に曲池を設け、池の東北に築山を築き、アカマツを主木としている。
池は浅く、南側の広がった水面に浮石を一つ置くだけのシンプルな作りである。
穏やかな印象を残す江戸末期の庭園で、滋賀県指定名勝となっている。

庭園奥に本堂があるが新築工事中だったため、境内の八十八箇所巡りに行ってみた。

安養寺八十八箇所巡り
安養寺の八十八箇所巡り。裏山に石仏が置かれ、気軽に散策できるようになっている。

一周20-30分で、山の中を歩くことができ、いい気分転換になった。
以前ご紹介した長安寺、石山寺にも同じ様な石仏巡りがある。ぜひお勧めしたい。

菩提寺西交差点
所変わって、西応寺最寄の交差点「菩提寺西」。歯科医院の脇に参道がある。

西応寺参道入り口
JR石部駅からタクシーで8分と聞いたが、駅前のレンタサイクルで電動自転車を借りた。
18時までに返せばいいという約束で、一日700円(普通の自転車なら500円)。
こちらでもほとんど人に出会わなかった。

西応寺山門とハギの花
西応寺は初夏のハギの花で知られる。ピンクの花があちこちで咲いていた。(5/8撮影)
雲南萩というらしい。20年ほど前に参拝者が植えたのが始まりという。
こちらのお寺も本堂が新築工事中のため、庭園を見せていただく。

西応寺庭園(主庭)
西応寺庭園。枯山水の見事な庭園である。(※特別公開期間以外は要予約。)
山と樹林と空を背景とし、建物の前面から山裾にかけて細長い枯池を巡らす。
高台には高さ33尺(約10m)の十三重石塔が建ち、ひときわ目を引く。

西応寺庭園(主庭西側)
築山の間に枯滝・枯流れを設け、大小高低様々な石灯籠や石擬宝珠柱などを置く。

西応寺庫裡と十三重石塔
庫裡の前の空間にも、山と樹林と空を背景にした小さな庭がある。十三重石塔が見事。

西応寺境内の石仏
西応寺境内の石仏。お供えの花と、前掛け、どちらも優しい色合いだった。

西応寺古絵図(廃少菩提寺古絵図)案内板と、アイリスの花
この地にはかつて、奈良興福寺の別院「少菩提寺」があった(廃少菩提寺と呼ばれる)。
廃少菩提寺の禅祥坊が、西応寺の前身である。

少菩提寺もまた、聖武天皇の勅願により、良弁によって開かれた寺だった。
菩提寺山一帯に、大金堂、三重塔、開山堂を中心に7つの神社と36の僧坊があったという。
少菩提寺に対して金勝寺を大菩提寺と呼んだというから、立派なお寺だったのだろう。
明応元年(1492)4月25日の記録のある古絵図には、山裾に禅祥坊があったことが伺える。

元亀2年(1571)、織田信長の兵火で菩提寺全山はほぼ焼失し、廃寺となった。
白洲さんが『近江山河抄』で書いている廃少菩提寺の石塔は、西応寺の近くにある。

西応寺だが、浄土真宗の寺として永正17年(1520)に建立された。
僧義全が本願寺門首・実如に帰依して禅祥坊専源と改め、西応寺を建立したという。
明応元年(1492)4月25日の記録のある古絵図が、寺宝として伝わっている。

菩提寺の町並みと、水を張った田んぼ
菩提寺の町並みと、水を張った田んぼ。のどかな田園風景が広がる。
最後に、菩提寺にある「齋神社」(いつきじんじゃ)をご紹介したい。

齋神社由緒
齋神社も少菩提寺ゆかりの神社である。731年頃、少菩提寺の守護神として建立。

齋神社鳥居

齋神社本殿

齋神社境内と、しだれ桜(藤兵衛桜)

齋神社拝殿
齋神社境内。観光協会から頂いた資料には、しだれ桜(藤兵衛桜)が有名とあった。

齋神社前を左折すると西応寺・廃少菩提寺、右折すると正福寺がある。
正福寺もまた良弁開基の寺で、サツキの寺として知られる。6月初めに訪ねる予定。

野洲川(中郡橋で撮影)
帰り道で撮影した野洲川(中郡橋で撮影)。今後何度かこの橋を渡ることになりそうだ。

 

次回、湖南市の常楽寺と長寿寺を訪ねます。紫香楽の宮5(常楽寺と長寿寺)へ続きます。

西応寺・廃少菩提寺周辺の地図(滋賀県湖南市)

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安養寺HPはこちら⇒http://www.tohozan-anyouji.com/

安養寺周辺の地図(滋賀県栗東市)

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