キュレーションサイトの問題点と法律論・対処法について、まとめました

私は現在写真家として活動していますが、元々の専門は法律で、著作権を守る方法についても当ブログでいくつか書いてきました。

写真の無断転載に抗議して使用料の話をしてみたところ・・・某バイラルメディア/キ...
しばらく更新できませんでした。実は今、ブログ写真の無断転載の件で、ある商用サイトに抗議しています。今までは削除請求だけで穏便に済ませてきましたが、今回は賠償の話もしました。相手方が企業で完全な営利目的で運営されているサイトなのと、今まで他の人達から正当な抗議を受けているのに無断転載が起きているか...

この記事の続編として、キュレーションサイトのことを書いてみました。

 

2016年11月末から始まったキュレーションサイト報道。きっかけは、DeNAの医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」が指摘を受けて非公開になったことでした。

そもそもは、永江一石さんがブログでWELQの件を指摘したことに始まります。
DeNAがやってるウェルク(Welq)っていうのが企業としてやってはいけない一線を完全に越えてる件(第1回)|More Access! More Fun!

キュレーションとは、もともと博物館・美術館等で専門知識に基づいて展示や企画をまとめる「キュレーター(curator/学芸員) 」から来ている言葉で、それ自体に悪い意味はありません。

いわばインターネット上の水先案内人のニュアンスで、キュレーションサイトという言葉は使われてきました。「まとめサイト」と呼ばれることもあります。

この数年、キュレーションサイトは劇的に増え、様々な問題が指摘されるようになりました。

法律と写真、両方の実務の視点から、キュレーションサイトの問題点と法律論・対処法について、まとめてみました。

問題点

1. 根底にある労働問題

以前から、キュレーションサイトのライターは、1記事数百円の賃金だと言われてきました。実際に筆者が目にしたのが、こちらの求人広告です。

クラウドソーシングといわれるネット上の求人サイトを使って、1記事300円-1000円で募集されていたことが分かります。

応募した人にも様々な事情があることは、容易に想像がつきます。

自宅で仕事がしたい、安価でもいいから家計の足しにしたいという思いの上に、主婦や学生アルバイトを集めて、記事の作成が行われていた側面は否定できません。

悲しいまでの労働力の搾取も、本人には見えづらい。読んでいて胸が締め付けられた記事です。

1円ライターから見た、キュレーションサイト「炎上」の現場

 

2. 著作権侵害

1記事数百円では取材費にもなりません。実際の記事はコピーが横行し始め、中には本来のキュレーターの意味から離れていくサイトも出てきました。

DeNAだけでも、11万件と言う数の著作権侵害が報道されています。
問題案件11万超 DeNA著作物パクリの「ケタ外れ」|毎日新聞

「WELQ(ウェルク)」では、DeNAが外部ライターに対してマニュアルを作成し、パクリにならないようリライトの指示を与えていたことが明らかになっています。

DeNAの「WELQ」はどうやって問題記事を大量生産したか 現役社員、ライターが組織的関与を証言|BuzzFeed

 

キュレーションサイトの運営会社は、SEOと呼ばれる技術でインターネット上の検索順位を上げています。検索で上位になった記事は多くのアクセスを集め、運営会社は広告収入を得るというビジネスモデルが出来上がりました。

そこに載せられている文章や写真が、かなりの数で他人の著作物だとしたら・・・皆さんはどう思われるでしょうか。

・「引用」だから許されるという一方的な言い分と、
・訴訟費用と手間を考えたとき、裁判を断念せざるをえない現状の下、著作権侵害は放置されてきました。

 

削除請求に応じてくれればまだいいほうで、ひどい場合は放置され続けます。あるいはまたどこかから似たような写真を持ってきて、パクリ記事は掲載され続ける現状があります。

出典元を記載しただけでは、写真の引用には当たらない(無断転載)だと弁護士からも指摘が出ています。

しかし、写真や文章の市場価値と訴訟費用を天秤にかけたとき、費用と手間を考えると、裁判にはなりにくいのです。大半は泣き寝入りです。

これではたまったものではないと、特にこの数年、被害に遭ったブロガー、イラストレーター、作家、写真家などが自分のブログやSNSで声を上げるようになりました。

 

3. 企業コンプライアンス、企業倫理

執筆でも撮影でもそうですが、取材・下調べ・打ち合わせの様々なプロセスを経て、記事や写真は出来上がります。

 

無断転載を行ったキュレーションサイト運営会社は、
・アイキャッチ(人目を引く効果)として他人の写真・文章を使いながら、
・「引用」だから許されるという言い分で、
・外部ライターに安価で記事を書かせて、
・広告収入を得るビジネスモデルを作り上げました。

 

これは、著作者の手間を盗むだけでなく、労働者としてのライターを搾取し、運営会社に対する信用・社会的信頼を失墜させる行為だと指摘しておきます。

DeNAの医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」では、薬事法違反も指摘されています。

 

法律論

1.プロバイダ責任制限法

実際にキュレーションサイトに損害賠償請求をする場合、立ちはだかるのはプロバイダ責任制限法という法律です。

プロバイダ責任制限法が想定しているのは、たとえば、ネット上で根拠の無い中傷をされて、書き込んだ相手を教えて欲しいとプロバイダに請求するような場合です。

プロバイダ側は情報の開示請求に応じると同時に、ブログや掲示板をサービスの場として提供しただけなので、プロバイダ自身の責任はないと主張することができます。

 

ところが、キュレーションサイトの場合は、この例とはだいぶ違います。

掲示板のようなサービスの場を提供するだけどころか、実際にライターを外注して記事を依頼していたのは運営会社です。リライトの指示マニュアルまであったケースも存在します。

しかし、プロバイダ責任制限法による申し立ては、記事を書いたライターの身元を明らかにするためのものなので、あくまでもライター個人への損害賠償が前提となります。
サイト運営会社に対する責任を、直接追及できないのか?

何か問題が起こったとき、ライター個人にだけ責任が追及されるような体制だとしたら?契約やら会員規約で、しっかりこの手の一文が入っていることが普通です。そのため、ますます問題は巧妙化します。

プロバイダ責任制限法が、キュレーションサイトの隠れ蓑になってはいけません。

プロバイダ責任制限法3条1項2号「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」には運営側も責任を負うとあります。

 

2.実情

本人確認書類(運転免許証のコピーや印鑑証明書)の提出や、権利侵害の証明は、侵害されたと主張する本人(または弁護士などの代理人)がしなければなりません。

著作者がペンネーム・旧姓の場合の証明は、運転免許証のコピーだけでは済みません。場合によっては戸籍抄本を取ることも必要になってきます。

そのうえ、印鑑証明を役所でとったり、抗議文を内容証明郵便で送るのは手間と費用がかかります。

プロバイダ責任制限法による情報開示請求は、数ヶ月~半年~一年は覚悟しなければなりません。

弁護士などの専門家に頼んでも時間はかかります。そもそも引き受けてくれる人を探すのも結構大変です。

そのうえ、執筆者(ライター)の身元の把握は困難であることが想定されます。

というのも、クラウドソーシングを通して、ネット上で求人あるいは会員登録がされていること。ペンネーム・1回きり・数年前のケースも考えられます。

プロバイダーのケースと違い、キュレーションサイト運営会社に情報がない可能性も考えられるのです。

 

キュレーションサイト運営会社の責任を使用者責任(民法715条)で追求する場合は、まとめ記事の執筆者(ライター)の不法行為が認定されることが前提となります。

この場合はそもそもまとめ記事の執筆者(ライター)が違うため、被害者同士で足並みをそろえるのが難しく、集団訴訟は難しいのではないかと考えられます(私見)。

運営会社自身に一般不法行為責任(民法709条)を追求できれば、集団訴訟も見えてくるのかもしれませんが、著作権侵害の時期や形態がすべて違う被害者同士で集団訴訟は難しそうです。

 

あとは刑事事件としての告発か、個人で民事訴訟をすることが考えられます。

本人訴訟で提訴するなら、被害者の地元の簡易裁判所で少額訴訟が可能です(訴額60万円以下)。

なお訴額(訴えにより請求する額)が140万円以下なら、認定司法書士に訴訟依頼が可能です。

提訴後、運営会社側が(訴訟戦術として)通常訴訟への移行を提案してきた場合には、移行に応じると、個人訴訟では不利な場合が多いと思われます。

通常訴訟への移行の提案は、訴訟の長期化が狙われている、あるいは複雑な事案が考えられるので、移行する場合は現実的には弁護士を立てるしかないと推察します。

 

3.法律構成

私見:執筆者(ライター)は不法行為責任(民法709条)、運営会社は使用者責任(民法715条)。両者は共同不法行為(民法719条)なので、運営会社にだけ請求することは可能です。

 

※運営会社自体に不法行為責任(民法709条)を追求する余地はあるのではないかと考えています(私見)。

プロバイダ責任制限法3条1項2号「他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき」には、運営側も責任を負うとあります。

筆者があるキュレーションサイト(カウモ)に指摘したのは、署名入り写真を使う等といった行為は、校正段階でチェックが入っていたとは思えず、社会通念上「相当の理由がある」といえるのではないか?という点でした。この点に関しては、いまだに解答がありません。

 

ただし、私が全額請求して会社側が払ってくれたとしても、めでたしめでたしではありません。

私はライターに対しては債務免除を行う(請求は行わない)が、会社は「あなたも責任があるから、会社の賠償した額の最低でも半分以上は分担しなさい」とライターに請求(求償)するでしょう。・・・債務の免除と求償権は別の話だからです。

私はライターさんを責めたいのではありません。

1記事につき3桁とも言われる原稿料なのに、この場合の企業からの求償は信義則上どうかと思います。

ちなみに写真の無断使用の場合は、正規料金の2倍以上の金額を請求するのが慣習になっています。ストックフォト最大手のアマナイメージズでは料金表に「200%」と明記されています

そこで、本件に関して会社側がライターに一切求償をしないことを条件に、当方は運営会社への損害賠償額を「使用料相当額」(正規代金と同額)に減額して請求するするのも一つの方法と考えています。

 

現状での現実的な対処法

実際にこれで自衛するしかないのが現状です。分かる限りの方法を明記しました。

 

1.著作権侵害の調べ方

・グーグル画像検索(Chrome)
ブロガー必見!写真のパクリはgoogle画像検索で簡単に見つけ出せる |旅するフォトグラファー有賀正博

・site:検索
ブロガーや写真愛好家の皆さん、勝手に写真を使われていますよ |しゅうまいの256倍ブログ neophilia++

・ウェブマスターツールによるリンク検索
写真の無断転載に抗議して使用料の話をしてみたところ・・・某バイラルメディア/キュレーションメディアの無断転載がひどすぎる件(当ブログ記事)

 

2.事前措置

・写真に署名を入れる
私は怒ってる!ヒドい写真盗用に遭ったので経緯と対策をまとめてみた!|studio9

・「キュレーションサイトお断り」と明記
NAVERまとめに無断転載“された”側の訴え……「抗議への対応に驚愕」|ITmedia ニュース(LINEが運営するキュレーションメディア「NAVERまとめ」が「NAVERまとめ転載禁止」と明記するよう解答)

・無断使用は「1日あたり○円」と明記
ブログに「無断使用は一日あたり50円/枚」と表記して自衛されている方もおられました(某氏の猫空さんのブログ

・NAVERまとめからのリンクを拒否(サーバーまたは忍者バリアーで)⇒後日記事にします

・記事更新ごとにGoogle Search Consoleでインデックス登録しておく(Fetch as Google)
サーチコンソール(Google Search Console)の使い方とSEO(「サイトへのGooglebotクロール申請」の箇所)

 

3.事後措置

まず、魚拓とキャプチャー(デジタルでの証拠保全)・印刷あるいはPDF化(アナログでの証拠保全)。

※魚拓:https://archive.is/を利用

※キャプチャー(Windowsの場合):PtnScnキーを押す→ペイントやPhotoshop Elementsを起動させて「貼り付け」
・Photoshop Elements:ファイル→新規→クリップボードからの画像
・ペイントを使う場合⇒Print Screen(プリントスクリーン)の方法が知りたい(画面をコピーしたり、印刷をする方法)|SONY


次にGoogleへ著作権侵害の通報(DMCA)。
Googleに著作権侵害の申し立てをするときは「名前の公開」に気をつけて!(当ブログ記事)

Googleへの通報が通って検索結果から除外されたことを確認してから、キュレーションサイト運営会社(または執筆者)あるいはSNS事務局へ通報。

・無断転載の削除要請文
キュレーションメディアに写真をパクられたら請求書を送ることにした
写真の無断使用を見つけたら、料金を請求しよう

 

・連絡先が分からない場合、あるいは削除要請や使用料相当額の支払いに応じない場合は、広告主(Googleアドワース等)への通報。

倫理に訴えるだけでは動かないキュレーションサイト運営会社がある以上、広告主への陳情は、やむなくとらざるを得ないときがあります。

この12月23日より、写真家の有賀さんが「LINE社が運営するキュレーションメディア最大手「NAVERまとめ」」に対する広告配信を再考するよう、広告主に対する陳情の署名活動を行っておられます。ご一読いただければ幸いです。